• ボイスドラマ「さるぼぼ〜魂を導くもの」

  • 2025/02/14
  • 再生時間: 12 分
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ボイスドラマ「さるぼぼ〜魂を導くもの」

  • サマリー

  • 『さるぼぼ〜魂を導くもの』は、飛騨地方に古くから伝わる「さるぼぼ」にまつわる不思議な縁を描いた物語です。「さるぼぼ」は、子どもや家族の幸せを願い、大切な人を守るお守りとして親しまれてきました。本作は、Podcast番組 「Hit’s Me Up!」 の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種プラットフォームでもお聴きいただけます。飛騨の風景とともに、さるぼぼが導く奇跡の物語を、ぜひ耳でもお楽しみください(CV:桑木栄美里)【ストーリー】<シーン1/古い町並にて>■SE/古い街角の雑踏「ママ」 え? 小さな声に振り向くと、軒先のさるぼぼと目が合った。雑貨屋に置かれた手のひらサイズの人形。赤い色が微笑んだように見えた。 私は、東京からふるさとへ戻ったばかり。先ほど、不動産屋さんで住居を探してきたところだ。まあ、よくある話。慣れない東京で人間関係に疲れ、逃げるように高山へ帰ってきたってわけ。ホントは、奥飛騨に空き家を借りて隠遁生活を送ろうと思ってたのに。それを不動産屋さんに伝えると、露骨に顔を顰めた。 ”冬山で1人で空き家に?””携帯の基地局も離れているからつながらないし””第一、女性が1人暮らしするところじゃない” 結局あきらめて店を出た。ひさしぶりに散策する高山市内。そのとき、この小さな赤い顔に出会ったんだ。 さるぼぼをとろうと伸ばした手の先が何かに触れる。 「あ、ごめんなさい」 それは、誰かの右手。私よりひとまわりくらい年上の男の人だった。年齢の割に幼い表情。はにかんだ笑顔はきっと好感度も高いんだろう。 お互いに顔を見合わせる。まるでドラマのような出会い。笑える。 <シーン2/宮川の朝市にて> ■SE/朝市の喧騒と宮川のせせらぎ そのあとの展開はまさにドラマ。映画のストーリーのように私たちの心はつながり、お互いに支え合うパートナーとなった。私は看護師となり地元のクリニックに勤務。彼は観光客向けにカフェを始めた。 2人で過ごす新しい人生。今日も肩を寄せ合って宮川の朝市を歩く。こうやって、一緒に年老いていくのかな。思わず口角が上がる。ただ・・・何も言わないけど、私たちの間に子どもができないこと。たぶん彼は気にしている。子ども好きな彼のことだから、家族がほしいのだろうな。私だって本当はそうなりたいのに・・・ 「ママ」 え? また?あの声。 私は周りを見渡す。もちろんどこにも子どもの姿はない。彼には聞こえていないようだ。 まあ、いいか。悪いことがおこるわけじゃないし。いまのひょっとして君かな? バッグの中から顔を出しているさるぼぼに目で訴えた。 ところが・・・ 翌日、私の懐妊が判明した。彼は、高山の遅い春が通り過ぎちゃったくらい喜ぶ。そこから先は、まあ、早かった。 新しい年が明けて、産声をあげたのは私にそっくりな娘。この娘はさるぼぼが連れてきてくれたのかな。 私たちは、文字通り目に入れても痛くないくらい娘を愛した。 娘が3歳になると、週末はできる限り、家族でドライブに出かけるようになった。真新しいチャイルドシートを後部座席にとりつけて。もしもの時も大丈夫。チャイルドシートは最も高機能のものを選んだから。 幼稚園の卒業。小学校の入学。 節目節目がもう嬉しくて、嬉しくて。この幸せは、永遠に続くものだと思っていた。あの日までは・・・ <シーン3/渋滞の車列> ■SE/救急車のサイレンの音 暖冬には珍しく大雪が降った週末。私たちは危ないからお出かけをやめようと言ったが、娘がどうしても行きたいとせがんだ。 仕方なく出かけたドライブ。彼はつとめて慎重に雪道を運転していた。だが、楽しく過ごした温泉からの帰り道。渋滞する車の列に、大型トレーラーが突っ込んだ。 目が覚めたときは病院のベッドの上。枕元で、ギプスをはめ、悲痛な顔をした彼が目を真っ赤にして泣いている。 あの娘は?どこ?怪我は?早く会わせて!え?なに?うそ!?そんなのうそ!うそでしょ!いやだ!信じない!聞こえない! 私たちでさえ一週間以上意識不明の重傷。後部座席の娘が無事なはずはなかった。 彼は私...
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あらすじ・解説

『さるぼぼ〜魂を導くもの』は、飛騨地方に古くから伝わる「さるぼぼ」にまつわる不思議な縁を描いた物語です。「さるぼぼ」は、子どもや家族の幸せを願い、大切な人を守るお守りとして親しまれてきました。本作は、Podcast番組 「Hit’s Me Up!」 の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種プラットフォームでもお聴きいただけます。飛騨の風景とともに、さるぼぼが導く奇跡の物語を、ぜひ耳でもお楽しみください(CV:桑木栄美里)【ストーリー】<シーン1/古い町並にて>■SE/古い街角の雑踏「ママ」 え? 小さな声に振り向くと、軒先のさるぼぼと目が合った。雑貨屋に置かれた手のひらサイズの人形。赤い色が微笑んだように見えた。 私は、東京からふるさとへ戻ったばかり。先ほど、不動産屋さんで住居を探してきたところだ。まあ、よくある話。慣れない東京で人間関係に疲れ、逃げるように高山へ帰ってきたってわけ。ホントは、奥飛騨に空き家を借りて隠遁生活を送ろうと思ってたのに。それを不動産屋さんに伝えると、露骨に顔を顰めた。 ”冬山で1人で空き家に?””携帯の基地局も離れているからつながらないし””第一、女性が1人暮らしするところじゃない” 結局あきらめて店を出た。ひさしぶりに散策する高山市内。そのとき、この小さな赤い顔に出会ったんだ。 さるぼぼをとろうと伸ばした手の先が何かに触れる。 「あ、ごめんなさい」 それは、誰かの右手。私よりひとまわりくらい年上の男の人だった。年齢の割に幼い表情。はにかんだ笑顔はきっと好感度も高いんだろう。 お互いに顔を見合わせる。まるでドラマのような出会い。笑える。 <シーン2/宮川の朝市にて> ■SE/朝市の喧騒と宮川のせせらぎ そのあとの展開はまさにドラマ。映画のストーリーのように私たちの心はつながり、お互いに支え合うパートナーとなった。私は看護師となり地元のクリニックに勤務。彼は観光客向けにカフェを始めた。 2人で過ごす新しい人生。今日も肩を寄せ合って宮川の朝市を歩く。こうやって、一緒に年老いていくのかな。思わず口角が上がる。ただ・・・何も言わないけど、私たちの間に子どもができないこと。たぶん彼は気にしている。子ども好きな彼のことだから、家族がほしいのだろうな。私だって本当はそうなりたいのに・・・ 「ママ」 え? また?あの声。 私は周りを見渡す。もちろんどこにも子どもの姿はない。彼には聞こえていないようだ。 まあ、いいか。悪いことがおこるわけじゃないし。いまのひょっとして君かな? バッグの中から顔を出しているさるぼぼに目で訴えた。 ところが・・・ 翌日、私の懐妊が判明した。彼は、高山の遅い春が通り過ぎちゃったくらい喜ぶ。そこから先は、まあ、早かった。 新しい年が明けて、産声をあげたのは私にそっくりな娘。この娘はさるぼぼが連れてきてくれたのかな。 私たちは、文字通り目に入れても痛くないくらい娘を愛した。 娘が3歳になると、週末はできる限り、家族でドライブに出かけるようになった。真新しいチャイルドシートを後部座席にとりつけて。もしもの時も大丈夫。チャイルドシートは最も高機能のものを選んだから。 幼稚園の卒業。小学校の入学。 節目節目がもう嬉しくて、嬉しくて。この幸せは、永遠に続くものだと思っていた。あの日までは・・・ <シーン3/渋滞の車列> ■SE/救急車のサイレンの音 暖冬には珍しく大雪が降った週末。私たちは危ないからお出かけをやめようと言ったが、娘がどうしても行きたいとせがんだ。 仕方なく出かけたドライブ。彼はつとめて慎重に雪道を運転していた。だが、楽しく過ごした温泉からの帰り道。渋滞する車の列に、大型トレーラーが突っ込んだ。 目が覚めたときは病院のベッドの上。枕元で、ギプスをはめ、悲痛な顔をした彼が目を真っ赤にして泣いている。 あの娘は?どこ?怪我は?早く会わせて!え?なに?うそ!?そんなのうそ!うそでしょ!いやだ!信じない!聞こえない! 私たちでさえ一週間以上意識不明の重傷。後部座席の娘が無事なはずはなかった。 彼は私...

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