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サマリー
あらすじ・解説
「八百屋お七」の物語をご存じでしょうか?江戸時代、恋に焦がれた少女が自ら火を放ち、悲劇の結末を迎えた――。この伝説的な物語は、時代を超えて人々の心を揺さぶり続けています。ボイスドラマ『恋の炎』は、この「八百屋お七」の物語を現代の感覚で再構築し、飛騨高山の情緒あふれる町並みに舞台を移したものです。高山の町家で生きる一人の少女。恋に燃え、運命に翻弄される彼女の想いを、どうか最後まで見届けてください。この物語は、ラジオ番組 「Hit’s Me Up!」 の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームでもお楽しみいただけます(CV:桑木栄美里)【ストーリー】■SE/電気を消す音とベッドのシーツをかける音『もう寝る時間よ』『寝る前にお話きかせて』『いいわよ。どんなお話にする?』『八百屋お七』『なにそれ、いきなりなんなの?』『テレビで言ってた』『え〜、あなたにはまだちょっと早いかな』『なんでー?聞きたい』『う〜ん』『聞きたい聞きたい聞きたい』『もう〜しょうがないなあ』『やたっ』『いい?八百屋お七っていうのはね』『やたっ』『ものすご〜く昔のお話なの』『ふ〜ん』それは、今から300年くらい前のこと。ここ高山の町家に太郎兵衛(たろべえ)という八百屋さんがあったの。お七はこの八百屋さんの一人娘。生まれてすぐに、お七のお父さんは亡くなってしまいました。お母さんは女手一つでお七を育てなければなりません。もともと小さなお店でしたが、それでも早朝から夜まで働き働き通し。お七は、こ〜んなちっちゃい頃からお母さんの仕事を手伝います。毎日毎日ちゃんと真面目に働きました。お客さんに対しても親切で礼儀正しかったからお店の人気ものになったんだって。それに、頭もすごくよかったし、商売の才能にも恵まれていたの。お七の八百屋さんは、町家の中でも評判に。遠いところからもお客さんがたずねてくるようになりました。それだけじゃないのよ。お七は誰に対しても優しかったの。飢饉のときなんて、自分の髪を切ってそれを売りお金に替えた。そのお金で米を買って、貧しい人たちに分け与えたそうよ。当時から『髪は女の命』って言われてたのにね。お七が十七になった年。高山で大きな火事が起こったの。高山って城下町だから、お城と武家屋敷、お寺、商人の町=町家と4つの地区があるでしょ。そのなかでも、昔から火事に悩まされてきたのが町家。このときの火事は歴史に残るくらい、大きな大きな火事。お七のお店も、ほかの店も、み〜んな焼けてしまいました。火事でお店やおうちがなくなっちゃった人々はどうしたのかな。みんなお寺に泊めてもらって助けあったのね。ほら、あの窓から見えるでしょ。少し高いところにある宗猷寺(そうゆうじ)。立派なお寺だねえ。お七とお母さんも、お寺の前に仮小屋(かりごや) を建ててしばらく住んでいました。そのとき、身の回りの世話をしてくれたのが、お寺の小姓さん・左兵衛(さへえ)。左兵衛は、おにぎりやら果物やらいろんな食べ物を持ってきれくれます。毎日のように小屋の掃除や洗濯も手伝ってくれました。左兵衛と何度も言葉をかわすうちに、お七は左兵衛のことがどんどん好きになっていきました。コホン(※咳払い)えっと。ここからはちょっと大人のお話になるから・・・あれ?寝ちゃった?なんだ、よかった。でも、ここからがいい話なんだけどなあ。じゃあ、今から大人の物語をはじめましょう。『左兵衛さん、そんなにしてもらっちゃ悪いわ』『お七さん、私が好きでしていることですから』いつしか2人は、お互い惹かれ合うようになります。ただ、お寺の門前は、火事で焼け出された人々の避難場所。仲良くし過ぎているところはあまり見られないようにしないといけません。しかも左兵衛は寺のお小姓ですからなおさらです。お七と左兵衛は人目を忍んで逢引きを重ねていきました。やがて、お七の母親に大金が入り込み、新しい住まいが町家に完成します。そのため、2人は引き離されることになったのです。実は、母親に大金を渡したのは、町家の大店(...