エピソード

  • ボイスドラマ「花火」後編
    2025/02/14
    離れていても、家族の絆は変わらない——そう信じていても、やはり時間の流れは、少しずつ私たちを変えていきます。後編『花火/食卓の愛』では、夢を叶えた娘と、そんな娘を支え続けた父の再会が描かれます。父の言葉に背中を押され、東京で新たな人生を歩む娘。それでも、彼女の心のどこかには、いつも「帰る場所」のことがあったのかもしれません。夏祭りの賑わいの中で、ふと感じる懐かしさ。屋台の金魚すくいに、小さな頃の思い出がよみがえる——そんなとき、そっと差し伸べられる大きな手。本作のクライマックスを、どうぞ最後までお楽しみください【登場人物】・女性(5歳/8歳/25歳)・・・子供の頃から夏祭りが大好き、雷が超怖い、3歳からクラシックバレエを習い10歳でソリスト。パリ・オペラ座バレエ学校へ入学し発表会ではプルミエ・ダンス―ルまで上り詰めた。その後パリ・オペラ座バレエ入団のオーディションは辞退。現在は東京のバレエ団で子供たちの育成に心血を注いでいる(CV:桑木栄美里)・男性(45歳/48歳/65歳)・・・遅くに生まれた末娘を溺愛。娘と一緒に夏祭りへ行くことが一番の楽しみだった。娘がパリへ行ってからは娘の帰郷を心待ちしている。ストーリーは前編後編で交錯します(CV:日比野正裕)<シーン1/娘5歳/花火大会にて>(SE〜遠くに聞こえる花火の音)娘: 「パパ、早く早く!」 父: 「そんなに急がなくても、花火はまだおわらないよ」娘: 「でも、少しでも近くで見たいんだもん」 父: 「ようし、じゃあ堤防までスキップだ!」◾️BGM(イメージ)/ルージュの伝言(荒井由実)娘: 父に手をひかれた5歳の夏。 いつも家ではつま先歩きをしているけど、今夜は特別。 目の前で花火を見たいからついつい早足になる。(SE〜花火の音/より近く)娘: 「わあ〜」 父: 「きれいだねえ」娘: 「うん、おっきなまんまる」 父: 「折りたたみの椅子、持ってきてよかったな」娘: 「もっと下の方へいきたい」 父: 「土手の方かい?」娘: 「うん」 父: 「いいけど、椅子は安定しないから、草の上に座ろうか」娘: 「やったあ」(SE〜土手を降りていく音)娘: 「よいしょっと」 (SE〜花火の音)父: 「すごい迫力だな。火の粉が降ってきそうだね」娘: 「パパ、おひざに座ってもいい?」 父: 「どうぞ」娘: 私は父の膝の上に腰をおろし、胸にもたれながら 大迫力の打上花火を楽しんだ。 クライマックスはスターマインと尺玉の競演。 二人とも夜空を見続けて首が痛くなってしまった。ふふふ。<シーン2/娘8歳/バレエ教室にて/花火大会の日>(SE〜遠くに聞こえる花火の音/ダンススタジオのレッスン)娘: それから3年後。8歳の夏。 窓の向こうには、大輪の花火が夜空に広がっている。 花火大会の日、私はバレエ教室でレッスンを受けていた。 バレエのコンクールは夏におこなわれることが多い。 コンクールに向けたレッスンで毎日のようにバレエ教室へ通っていた。 そもそもクラシックバレエを習いたいと言い出したのは私。 私には、3歳の頃からバレエダンサーになりたいという夢があった。 ママに連れていってもらったバレエの舞台を見て すっかり夢中になっちゃんたんだ。 演目は有名な「白鳥の湖」。 でも私が魅せられたのは、白鳥のオデットではなく、黒鳥。 ライトを浴びる黒鳥オディールの怖いほどの美しさ。 回り続ける漆黒の煌めきから目が離せなくなった。 このときから、私の夢はいつかファーストソリストになって 黒鳥を舞うこと。 花火大会も夏祭りも大好きだったけど、それよりも夢を優先した。 若干8歳の女の子が。 ちょうど花火大会が終わる頃。 私は、バレエ教室の先生から声をかけられた。 ”パリのオペラ座バレエ学校を受けてみない?” パリ・オペラ座バレエ学校。 世界一の水準と言われるパリ・オペラ座バレエ団に入る 多くのダンサーはここへ通う。 そうか。確か8歳から入学は可能だ。 しかも国籍に関係なく、優れたダンサーであれば誰でも応募できる。 もちろんすごい競争率に勝たないといけないけど。 柔軟性、筋力、スタミナも含めた身体的能力...
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  • ボイスドラマ「夏祭」前編
    2025/02/14
    幼い頃の夏祭りの思い出を覚えていますか?屋台の光、響き渡るお囃子、夜空を彩る花火——そんな情景の中に、大切な人との思い出が詰まっているのではないでしょうか。本作『夏祭り/食卓の愛』の前編では、幼い娘と父の、夏祭りを中心とした心温まる日々を描きます。バレエに打ち込む娘と、そんな娘を見守る父。そして、いつか訪れる「旅立ち」の瞬間。家族の絆は、離れてもなお続いていくもの。けれど、だからこそ「食卓」の温もりがどれほど大切なのか、改めて気づかされます。この物語を読んで、誰かと過ごした大切な時間を思い出していただければ幸いです【登場人物】・女性(5歳/8歳/15歳)・・・子供の頃から夏祭りが大好き、雷が超怖い、3歳からクラシックバレエを習い10歳でソリスト。パリ・オペラ座バレエ学校へ入学し発表会ではプルミエ・ダンス―ルまで上り詰めた。その後パリ・オペラ座バレエ入団のオーディションは辞退。現在は東京のバレエ団で子供たちの育成に心血を注いでいる(CV:桑木栄美里)・男性(45歳/48歳/55歳)・・・遅くに生まれた末娘を溺愛。娘と一緒に夏祭りへ行くことが一番の楽しみだった。娘がパリへ行ってからは娘の帰郷を心待ちしている。ストーリーは前編後編で交錯します(CV:日比野正裕)■資料/バレエダンサーの階級https://www.noaballet.jp/knowledge/term/%20prima.html#:~:text=バレエ団に所属し,とどんどん上がってきます。【Story〜「夏祭り/食卓の愛/前編」】<シーン1/娘5歳/バレエ教室の帰り道〜夕立>(SE〜雷の音/夕立の雨)娘: 「きゃあっ!」 (SE〜雨の中早足で歩く足音/玄関の扉を開いて閉じる音)娘: 「雷こわいよ〜!!」父: 「ようしよし、こわかったね。 よくがんばった、えらいぞ。 もう大丈夫。 パパがついているから」娘: 「パパ!大好き!!」◾️BGM(イメージ)/やさしさに包まれたたなら(荒井由実)父: 5歳の娘が私の胸に飛び込んでくる。 2年前から習い出したバレエ教室。 その帰り道で突然の夕立にあってしまったらしい。 泣きながら、妻のデニムジャケットに顔をうずめて帰ってきた。娘: 「カミナリ、もういなくなった?」父: 「うん、どっか行っちゃったよ」娘: 「ああ、よかったぁ」父: 「さ、もう心配ないから夕ごはんrr を食べよう。 食卓に座って」娘: 「はあい」父: 「今日は、おまえの大好きな卵焼きだぞ」娘: 「やったぁ!」父: 「今日のバレエ教室のこと、パパに教えてくれる?」娘: 「うん。また先生に褒められちゃった」父: 「そりゃすごいな」娘: 「ワタシのタンデュがとってもキレイだって」父: 食卓に座り、バレエ教室の様子を楽しそうに話す娘。 先ほどまでカミナリで取り乱していたのが嘘のようだ(笑) 妻は、娘の横で何も言わずに微笑んでいる。 まるで、絵に描いたような、幸せなひととき。 食卓は家族の絆の象徴だった。<シーン2/八幡神社の夏祭り>(SE〜祭り囃子と雑踏)娘: 「パパ、牛串とパイン串食べたい!」父: 「あれ?さっきも食べてなかったけ?」娘: 「いいの!夏祭りなんだから」父: 浴衣姿の無邪気な笑顔が夜店の間をかけていく。 妻も私もついていくのに必死だ。娘: 「早く早く!」父: 「走っちゃ危ないよ」娘: 「わかってる〜」父: 家の近くの八幡神社。 参道に並ぶ灯篭に灯りがともり、屋台が軒を連ねる。 ヨーヨー釣り、金魚すくい、輪投げ、射的、千本つり・・・ 娘は2本の串を両手に持って、あっちの屋台からこっちの屋台へ。 帰り道、私の右手には2匹の金魚が泳ぐビニール袋。 妻の左手に揺れているのは、白地に赤い模様のヨーヨー。 両手をつなぐ娘の顔には、少女アニメのお面が笑っていた。<シーン3/娘8歳/網戸から風が入ってくる>(SE〜セミの声と風鈴の音)娘: 「パパ、オペラ座バレエ団って知ってる?」父: 「なんだい、それ?」娘: 「すごく有名なバレエ団なの。学校もあるのよ」父: 「へえ」娘: 「バレエの先生がね。その学校を受けてみたらって?」父: 「ほう、いいじゃないか」娘: 「でも、パリって遠くない? 8歳から入学できるからって」父: 「パリ!?...
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  • ボイスドラマ「遅れてきた春」後編
    2025/02/14
    前編から3年——。『遅れてきた春』の続編、『June Bride/KICHI』へようこそ。3年の月日は、人を変えるには十分な時間です。彼女はキャリアコンサルタントとして子どもたちの未来に向き合うようになり、彼は主任教諭となりさらに教育に情熱を注いでいます。そして、二人は大切な時間を重ね、ある「決断」の時を迎えようとしています。そんな二人の物語の舞台となるのは、再び「ねむりデザインLABO」。3年前に偶然出会った場所で、今度はどんな物語が紡がれるのでしょうか。結婚、人生のパートナー、そして「眠り」という日常の大切な時間。それらが交錯する、少し大人なラブストーリーをお楽しみください【登場人物】・女性(28歳)・・・前編から3年後。変わらずVチューバーを続けながらダンスの公演を定期的におこなっている。アバターを使ったキャリア授業は小中学校で広がり、現在は週に6コマを受け持つ。でも実は子供が苦手(CV:桑木栄美里)・男性(30歳)・・・30歳を迎え主任教諭になった。キャリア教育には特に熱心でドローンや生成AI技術などの専門家を呼んでさまざまな授業を取り入れている。彼女とは付き合いはじめて3年目を迎えプロポーズを考えている。子供が大好き(CV:日比野正裕)<シーン1/小学校の教室>(SE〜学校のチャイム/小学校の教室)彼女: 「はい、今日の授業はここまでにしましょう。 みなさん、生成AIの使い方はしっかりマスターしましょうね」 (SE〜小学校の教室/子供たちの返事)彼: 「みんな、テキストを使った生成方法はもう理解したな。 来週は全員に発表してもらうぞ」彼女: 「次回はフリーハンドで描いたイラストを生成AIで仕上げてみましょう。 それを3Dプリンターでフィギュアにしてもいいわね」 (SE〜小学校の教室/子供たちの歓声)◾️BGM/彼女: 初めてこの学校へきてからちょうど3年目。 最初に教壇に上がったときは覆面のVチューバー。 臨時のキャリア講師だった。 転機は去年。キャリアコンサルタントの国家資格を取得したこと。 いまは、いろんな学校でキャリアタイムを企画・実施している。 もちろん、素顔で。 実務は、子どもたちの進路相談に乗ったり、キャリア形成の支援。 今だから言うけど私、ホントは昔から、子どもって少し苦手だった。 彼と真逆なの、ふふ。 子どもたちの前で素顔を見せなかった理由には、それもあるんだ。 でも、こんな小さな子たちが真剣に将来に向き合う姿を見ているうちに ああ、子どもも大人もないんだなって。 それにみんな、なんでも私に相談してくれるから可愛くって・・・ あれ? じゃあ私、なんで子どもが苦手だったんだろう。(SE〜学校のチャイム/夕暮れのイメージ/カラスの鳴き声とか)(SE〜LINEの着信音/会話の間にも着信音が鳴る) 彼女: ふふ。まるで定時連絡。 マメな彼から今日の予定が送られてくる。彼: 『おつかれ! 今日はこのあと職員会議だから夕食、1時間後でどう?』彼女: 私もルーティンで返信する。 『オッケー。私も教育委員会に顔だけだしてくるから』 彼: 『じゃあ待合せはいつものカフェで』 彼女: 『その前に行きたいとこあるんだけど』彼: 『どこ?』 彼女: 『ねむりの悩みを相談できるとこ』 彼: 『あー了解。じゃあ待合せ場所を変えよう』 彼女: 『いいの?』 彼: 『僕も行きたいと思ってた』 彼女: 彼はいつもテンションが高いけど、 なんだか今日は私に気を遣ってる感じ。 私は返事を絵文字で返して、学校をあとにした。<シーン2/ねむりデザインLABO>(SE〜店内の雑踏/小走りの足音)彼女: ああ。ハイヒールってちょっと走りにくい。 市が主催する定例のキャリア会議。 私の提案が白熱して長引いてしまった。 提案したのは「木工」。 いまの子どもたちに、木工の技術を知ってもらいたいの。 Vチューバーの私が「木工」って、なんかヘンな感じだけど 子どもの頃から木の温もりって好きだったんだ。 タブレット上でキャラクターを作って動かすだけじゃなくて 自然の木から形あるものを作るってこと教えたかったの。 家具屋さんの知り合いもいるしね(笑)(SE〜街角の雑踏/小走...
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    10 分
  • ボイスドラマ「遅れてきた春」前編
    2025/02/14
    『遅れてきた春/ねむりデザインLABO』は、異なる世界に生きる二人——小学校の教師とVチューバーの女性が、キャリア授業を通じて出会い、「眠り」をきっかけに心を通わせる物語です。春の訪れは誰にでも平等ですが、そのタイミングは人それぞれ。子どもが苦手なVチューバーと、子どもが大好きな教師。正反対の二人が偶然の出会いを重ね、やがて特別な時間を過ごすようになる。そんな「少し遅れてきた春」の物語をお楽しみください。この物語は、家具とインテリアの「ねむりデザインLABO」を舞台に描かれ、眠りの悩みや快適な睡眠環境についても触れています。物語を楽しみながら、あなたの「眠り」についても考えるきっかけになれば嬉しいです【登場人物】・女性(25歳)・・・Vチューバー。この春4月から名古屋市内の小学校で始まったキャリア授業でアバターのキャラクターを作りスーツを着て動かす授業を担当する。実は子供が苦手(CV:桑木栄美里)・男性(27歳)・・・22歳の新卒時に教員免許を取得。小学校で五年生の担任をつとめるとともに課外活動やボーイスカウトも含め積極的にいろいろな活動に取り組んでいる。この春新任の女性教諭にキャリア教育をお願いしている。子供が大好き(CV:日比野正裕)【Story〜「遅れてきた春/ねむりデザインLABO/前編」】<シーン1/小学校の教室>(SE〜学校のチャイム/小学校の教室)彼女: 「みなさん、はじめまして。 私はVチューバーです」 (SE〜小学校の教室/「おお〜」というどよめきがおこる)彼: 「なんだ、みんな知ってるのか? 一応、先生からも説明しておくぞ」◾️BGM/彼: 小学校五年生の教室。 男の子も女の子も、みんな興味津々だ。 今回お願いしたのは、女性のVチューバー。 顔出しはNGなので覆面をしている。 元々は、お芝居とかダンスをするのが生業(なりわい)だそうだ。 それでも最近は、芝居よりVチューバーの方が忙しいという。 黒板と、生徒たちとの間には小さな衝立。 彼女はその向こう側へ移動して覆面を脱いだ。 事前にセッティングされたカメラの前に立つと 大型モニターの中のキャラクターが目覚める。 彼女の動きに合わせてキャラクターが踊りだした。 クラス中に歓声が上がる。 私は学年主任でこのクラスの担任教諭。 春からスタートしたキャリア教育の授業を担当している。 子供たちの視線を一斉に浴びながら キャラクターがポーズを決める。 エンターテインメント満載の授業。 1コーラスのボカロミュージックに合わせたダンスのあと、 彼女は再び覆面をして生徒たちの前に立った。彼女: 「今度はみんなにもキャラクターを動かしてもらいましょ」 どよめきと大歓声。 そのあとは、順番争いが起きるほど、大いに盛り上がった。(SE〜学校のチャイム/夕暮れのイメージ/カラスの鳴き声とか) 彼: 「先生!」彼女: 「あ、はい・・・」彼: 2コマ連続の授業。 終わって帰ろうとするVチューバーを呼び止めた。彼女: 「なんでしょう?」彼: 「今日はどうもありがとうございました」彼女: 「いえ、こちらこそ。 あんな感じでよかったのかしら」彼: 「はい。 子供達があんなに目をキラキラさせたの、ホント久しぶりです」彼女: 「そうですか」彼: 「よかったらお茶でも飲んで少しお話しませんか? あと15分でホームルーム終わりますから」彼女: 「ありがとうございます。 でも、ちょっと今日は・・・先約がありますので。 また誘ってください」 彼: 「そうですか・・・ わかりました。じゃあまた今度。きっとですよ」彼: 考えるより先に言葉が出てしまった。ちょっと強引すぎたかな。彼女は曖昧な笑顔で校門をあとにした。<シーン2/ねむりデザインLABO>(SE〜店内の雑踏)彼: 放課後のホームルームが思ったより早く終わったので いつもの家具屋さんへ足を向ける。 行き先はこれまたいつものベッドコーナー。 ねむりデザインLABO、というらしい。 最近ずうっと寝不足で体調が悪い。 枕を変えて少しは眠れるようになったけど、 首・肩・腰の痛みは慢性的になってきてるなあ。 そんなことを思いながら、 デザイン的に並べられた...
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    11 分
  • ボイスドラマ「風立ちぬ」後編
    2025/02/13
    彼女の仕事は、やりがいがありながらも決して楽なものではありません。そんな彼女の支えとなるのは、老人ホームの仲間たち、そして遠くから見守る彼でした。仕事に、夢に、そして恋に——。新しい季節の風が吹き抜ける中、彼女の心は少しずつ未来へと向かっていきます。「風立ちぬ。さあ生きねばならぬ」この言葉が、彼女にどんな決断をもたらすのか・・【登場人物】・彼女(22歳)・・・この春から新社会人一年生。養護老人ホームで働きながら来年社会福祉士の資格をとり、市の社会福祉協議会へ転職したいと考えていたが・・・(CV:桑木栄美里)・彼(25歳)・・・広告会社に勤めて足かけ4年でこの春起業した。Web解析士の資格を取得してホームページ制作・管理とSNSマーケティングの仕事で走り回るが・・・(CV:日比野正裕)<シーン1/堤防沿いを歩くカップル>(SE〜小川のせせらぎ)彼女: 「風立ちぬ。さあ生きねばならぬ」彼: 「なんだい、それ? そんなアニメもあったっけ」彼女: 「もう〜。 マーケターならそのくらい知っててよ」彼: 「知ってるよ。詩だろ」彼女: 「そう。ポール・ヴァレリーの詩。 うちの入所者さんに、この詩が好きな人がいるの」 ◾️BGM/彼: 彼女は、この春から養護老人ホームで働いている。 仕事はやりがいがあるって言ってたけど、実際には大変そうだ。 肉体的にも精神的にも。 だって、彼女が働き出してから、デートしたのは今日がはじめて。 もう5月だというのに。 体壊さないといいけど。彼女: 「なあに?黙っちゃって。 あ、また、私の仕事のこと考えてるんでしょ」彼: 「いや、そうじゃないけど」彼女: 「うそばっかり。 働き方改革に逆行した ブラックな業界だって言いたいんでしょ」彼: 「そんなこと思ってないって」彼女: 「だって、顔に書いてあるんだもん」彼: 「ひどい誤解だな。 福祉の業界が大変だってことくらいわかってるよ」彼女: 「じゃあ、なんでそんな、眉間に皺が寄るの」彼: 「君は僕が起業したこと、忘れてない?」彼女: 「忘れているわけないじゃない。 一緒にお手伝いしたんだもの」彼: 「うん。すっごく嬉しかった。 書類作るのとか手伝ってくれて。 この恩は一生忘れないよ」彼女: 「おおげさだなあ。 それで、順風満帆なんでしょ」彼: 「まあだいたいはね。 いい風が吹いてるよ」彼女: 「さわやかな大気が海より湧きあがり、 わたしに魂を返す」彼: 「お!ポール・ヴァレリー。 まあ、そうなんだけどね。 一人でやっていくのは大変なんだな、やっぱり」彼女: 「そうなの」彼: 「うん。営業も、データの分析もすべてひとりだからな」彼女: 「ふうん」彼: あんまり細かく語り出すと、ただの愚痴になっちゃうからなあ。 実際には、自分の労務管理とか経理とかやらなきゃいけないし。 外で打合せしてオフィスに帰ってきてからデータの分析して レポート作ってると夜中の12時を回っちゃう。 この前なんて目を充血させて打合せしてたら クライアントが僕の目ばっかり見るもんだから、話が全然進まなかったからなあ。彼女: 「あ?ひょっとして・・・眠れてないんじゃない?」彼: 「え」彼女: 「図星でしょ」彼: 「あ、まあね。そりゃこのライフスタイル見てたらわかるよなあ」彼女: 「実は私もついこの前まで不眠症に悩んでいたんだ」彼: 「そうなの?」彼女: 「うん。今はぐっすり眠れているけどね」彼: 「ホント?なにをしたの?」彼女: 「なら、いまから治療にいきましょうか」 <シーン2/インテリアショップ>(SE〜インテリアショップのガヤ)彼: 彼女が連れてきてくれたのは、 病院ではなく、なんとインテリアショップ。 放射状にディスプレイされたベッドの前で スリープアドバイザーがわかりやすく説明してくれる。 不眠の症状について。うん。 寝つきが悪く、ベッドに入っても30分以上眠れない。(眠れない) 途中で目が覚めて、なかなか寝付けない。(寝付けてないな) 朝早く目が覚めてしまう。(うん) ぐっすり眠った気がしない。彼女: 「ちょっと〜、やばくない。 全部あてはまってるじゃん」彼: ...
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    11 分
  • ボイスドラマ「風立ちぬ」前編
    2025/02/13
    新しい環境、新しい出会い——春は希望と不安が入り混じる季節。主人公は新社会人として養護老人ホームで働き始めたばかり。そこで出会ったのは、ポール・ヴァレリーの詩を口ずさむ老人でした。仕事に追われ、睡眠不足と戦いながらも、彼女は前へ進もうとします。日常の中で見つけた、小さな「気づき」が彼女を大きく成長させていく——。「風立ちぬ。さあ生きねばならぬ」この言葉が彼女の心をどのように支えていくのか—【登場人物】・女性(22歳)・・・この春から新社会人一年生。養護老人ホームで働きながら来年社会福祉士の資格をとり、市の社会福祉協議会へ転職したいと考えていたが・・(CV:桑木栄美里)・老人(70歳)・・・5年前に長年勤めた不動産会社を定年退職。古希を迎えたのを機会に娘夫婦のすすめで養護老人ホームへ入居したが・・(CV:日比野正裕)<シーン1/老人ホームのエントランスロビー>(SE〜老人ホーム=病院のガヤと朝の小鳥)彼女: 「おはようございます!」 ◾️BGM/彼女: 養護老人ホームのエントランス。 掃除の行き届いたロビーを通って 今日も元気に出勤する。 老人: 「お、今朝も元気だねえ」彼女: 「あ〜、元気だけがとりえだって思ってるんでしょ」老人: 「ちゃうちゃう。今日も元気をもらえて若返るなあってこと」彼女: 「やだ、私の若さを持ってかないで〜」老人: 「あはははは。 風立ちぬ。さあ生きねばならぬ」彼女: 入居者の中で一番若いおじいちゃん。 いつもポール・ヴァレリーの詩を口にする。 この春入居したばかりで 元気いっぱい。 私も今年卒業して 施設で働き出した新人だから なぜか気が合うんだなあ。 だけど・・・ 実は、元気がいいのは朝の出勤時だけ。 夕方近くなってくると だんだんテンション下がってくるんだよね。 肩と腰の疲れもピークになってくるし。 これって・・・五月病? あ〜ん。もう〜だめだめ。そんなこと考えちゃ。 気持ちだけでもテンションあげてかないと。 にしても・・・ やっぱ疲れの原因は睡眠不足かなあ。 いやいや。 睡眠不足だから五月病になるわけで・・・ あ〜。 どっちにしても負のループ。断ち切らないと。老人: 「今日は早番かい?」彼女: 「そうよ〜、この笑顔を見られるのも夕方までってこと」老人: 「まあ、毎日一生懸命で疲れているだろうからな。 残業なんかはせずに帰ってゆっくり休みなさい。」彼女: あ。 やっぱりわかっちゃうのかなあ。 疲れは顔に出るもんねー。 とはいえ 私にはちゃんと目標がある。 1年間老人ホームで働きながら勉強して、 来年、社会福祉士の資格をとる! 合格率30%という 難関の資格だけど、がんばらなくちゃ。 私が卒業した四年生大学は、福祉系じゃなかったからね。 どうしても 1年以上の実務経験が必要になってくるんだ。 施設に入ったら すぐに初任者研修を受けて、いまはヘルパー。 社会福祉士になったら、市区町村の社会福祉協議会で働くつもり。 介護を受けたい人の相談を聞いて、少しでもお役に立ちたい。 まあ、今の仕事も同じだけどね。老人: 「あ、来年の社会福祉士試験のこと、考えてるな」彼女: 「なあに言ってるの?」老人: 「頑張るんだよ。応援してるから」彼女: 「ありがとう」彼女: こう言われるたびに うるっとしちゃう。 それを気づかれないようにして、食堂へ急いだ。 ラジオ体操のあとは 食事の介助。 みんなが朝食後 食卓でくつろいでいる間に お部屋を掃除する。 あら〜、入居者のベッド、だいぶんヘタってきてるなあ。 所長は新しいベッドに買い替えなきゃって言ってたけど 50人分もあるから大変だわ。 腰が痛い人、肩こりがひどい人。 柔らかいマットレスがいい人、硬いマットレスじゃないと眠れない人。 高い枕が好きな人、低い枕しか受け付けない人。 もう、たいへん。 みんなのリクエストに答えることができるのかなあ。 それと気がかりなのは、私自身、最近ひどい不眠症。 仕事はやりがいがあるけど、時間が足りなくて。 なのに 働き方改革で早く帰りなさいって言われるし。 ストレスがどんどん溜まっていく。 ...
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    13 分
  • ボイスドラマ「桜花抄」後編
    2025/02/12
    前編から時は流れ、あれから10年——。彼女と彼は、結婚し、娘とともに新たな生活を送っています。家族の形、仕事の変化、ライフスタイルの選択。10年前、桜の木の下で交わした約束は、どのように育まれてきたのでしょうか。インテリアを選ぶことは、家族の未来を描くことでもあります。そして、変わりゆく生活の中で、変わらない想いがあることを、二人は改めて知るのです。新しい家、新しい暮らし、そして、家族としての10年目の節目。前編で交わした和歌が、後編ではまた違う意味を持ち、二人をつなぎます。桜の季節に紡がれる、家族の物語【登場人物】・妻(32歳/42歳)・・・一部上場企業の企画・広報部チームリーダー。今年8歳になる娘の母親。最近のライフスタイルはヴィーガン食で家族もそれに倣っている(CV:桑木栄美里)・夫(32歳/42歳)・・・大学院の人工知能科学研究科を修了し、先端ITC企業から請われて入社。AIによる社会貢献を進めている(CV:日比野正裕)・娘(8歳/18歳)・・・小学校3年生/大学1年生。寡黙だが、SDGs意識高い(CV:桑木栄美里)<シーン1/夜桜の公園>(SE〜花見の風景)妻: 「今日(けふ)のためと、思(おも)ひて標(しめ)し、あしひきの、 峰(を)の上(へ)の桜(さくら)、かく咲きにけり」 ◾️BGM/夫: 「それは・・・まだ聞いたことのない歌だ」妻: 「じゃあ、もう一首。 あしひきの、山の際(ま)照らす、桜花(さくらばな)、 この春雨(はるさめ)に、散(ち)りゆかむかも」夫: 「どういう意味?」妻: 「最初の歌は、 今日のために目星をつけておいた桜が咲いてくれた。 2つ目は、 山間を照らすように咲いている桜の花が春の雨で散っちゃうのはやだなあ。 って意味。 桜、きれいだねえ。 桜さん、ありがとう。 雨が降っても散らないでね。 ってことだよ。ねっ」夫: 妻の横で娘が、何も言わずに微笑む。 8歳の娘は、妻の詠む和歌が大好き。 意味もわからず、ニコニコ聞いている。 いや、いつも説明されてるから意味はわかっているのかな。 10年前。 まだ結婚する前に、妻と2人で歩いた桜並木。 世の中がどんどん変わっても毎年、美しい花を咲かせてくれる。妻: 「和歌を詠むと、桜が一層美しく見えるよね」夫: 娘が大きくうなづく。本当にそう思っているのか。 半分疑りながら 娘を真ん中にして、3人で手をつないで歩く。 幸せに包まれる瞬間。妻: 「今日はね、10年前 にパパとママがデートしたところへ行くのよ」夫: デート? そうか、あれはデートだったんだな。 娘がはしゃぎ始めた。妻: 「さあ、桜のトンネルを抜けていくわよ」夫: 妻が娘の手をひく。 私はその手にひっぱられるように、早足で花曇の並木を歩いていった。<シーン2/インテリアショップ>(SE〜インテリアショップの雑踏)娘: 「わぁ〜すごぉい」夫: 初めてきたインテリアショップに驚く娘。 エリアごとに再現された部屋に感動している。 まるでテーマパークにきたみたいに。妻: 「でしょう。 ここはいろんなお部屋がたくさんある、家具のテーマパークなのよ」夫: なるほど。うまい表現だな。 さすが、大学で国文学を専攻してただけある。 っていうより、企画部のチームリーダーだもんな。妻: 「ほら、プリンセスのお部屋も」娘: 「ほんとだ。ピンクがかわいい」夫: はしゃぎまわる娘に目を細める妻。 実は、私の方が妻より嬉しいのだが。 今日の目的は、新生活の家具選び。 とは言っても、10年前のように一人暮らし用ではなく、家族のため。 実は、もうすぐ新しい家が完成するんだ。 そう、新築の新居。 妻のこだわりで、作りつけの収納は、あえて最小限にした。 自分たちで家具を選んで、イメージ作りをしたいらしい。 娘の成長に合わせた節目節目で、イメージチェンジもするのだという。 そういうライフスタイル いいものだなあ。妻: 「ねえ、自分のお部屋はどんな風にしたい?」娘: 「不思議の国みたいなお部屋」妻: 「そうかあ。じゃあこっちの部屋かな」娘: 「あ〜」夫: そこは、キュートでおしゃれなプリンセス系インテリアのお部屋。 シャビーシックなピンクと白を基調にしたアイテム...
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    10 分
  • ボイスドラマ「桜花抄」前編
    2025/02/12
    春は新たな始まりの季節。桜が咲き誇る中、22歳の彼女は大学を卒業し、一部上場企業のマーケターとして社会へ踏み出します。彼女の隣には、高校時代からの恋人で、大学院でAIを研究する彼の姿。学生から社会人へと変わる瞬間、彼女が見つめるのは未来か、それとも過去か——。この物語は、そんな彼女と彼が、新しい生活の中で「選ぶこと」と向き合いながら、未来を描いていく物語です。家具を選ぶことは、単なるインテリアの話ではなく、自分らしさや人生をどうデザインするかということ。春の夜、桜の下で交わされた言葉、そして二人が訪れたインテリアショップでのひととき。その先に待っている未来とは——。新たな門出を迎えるすべての人に、この物語が寄り添えますように【登場人物】・彼女(22歳)・・・大学4年間で国文学を専攻しこの春から新社会人に。一部上場企業の企画・広報担当のマーケターとして採用された。彼は高校時代から付き合っている同級生(CV:桑木栄美里)・彼(22歳)・・・大学4年生ののち、大学院の人工知能科学研究科で最先端のAIと社会のつながりを研究している(CV:日比野正裕)【Story〜「桜花抄/新社会人と新生活/前編」】<シーン1/夜桜の公園>(SE〜花見の風景)彼女: 「桜花(さくらばな)、時は過ぎねど、見る人の、 恋(こ)ふる盛(さか)りと、今し散るらむ」 ◾️BGM/彼: 「なんだい、それ?」 彼女: 「万葉集よ。 まだ散るときじゃないけど、 愛でてくれる人がいるうちに散っちゃおうかなぁって。 そんな桜の花の気持ちをうたった詩(うた)」彼: 「へえ〜。さすが国文学専攻」彼女: 「またぁ。すぐそうやって茶化す。 でもこの詩、いまの私の気分かも」彼: 「どうして?全然散ってなんかいないじゃん」彼女: 「気持ちの話よ。 私、本当は純粋にもっと大学で国文学を勉強してみたかったんだ。 でも、愛でてくれる人がいるうちに社会に出てみようかなーって思ったの」彼: 「愛でてくれる人って?」彼女: 「やだもう。ばか」彼: 「そんなんいいじゃないか。 一流企業の企画・広報部なんて、なりたくてもなかなかなれないぜ」彼女: 「そうだけど」彼: 「君の好きな国文学の知識をマーケティングに生かせばいい」彼女: 「簡単に言うんだから」彼: 「いや、ホントにいいと思う。 万葉集って去年、SNSでバズってるし」彼女: 「まあねー。 なんか、AIでビッグデータとか研究してるあなたらしい答え」彼: 「あ、そっちこそ、そうやって茶化す」彼女: 「私は尊敬してるの」彼: 「僕だって尊敬してるさ、君のこと」彼女: 「ありがとう。 ねえ、花篝(はなかがり)が灯る前に付き合ってほしいとこがあるの」彼: 「ああ、もうそんな時間かあ。 で、どこいきたいの?」彼女: 「私、就職が決まってアパート借りたんだけど、 まだ何にもない部屋なんだ」彼: 「そうなんだ」彼女: 「さ、行こ」彼: 「え、だからどこへ?」彼女: 「もう〜。いいから、きて」<シーン2/インテリアショップ>(SE〜インテリアショップの雑踏)彼: 「そっかあ。家具屋さんか」彼女: 「家具だけじゃなくて、雑貨や絵画も置いてあるから、インテリアショップね」彼: 「インテリアスタジオ。うん、確かにわかりやすいネーミングだ」彼女: 「うちの会社、リモートが多いからホームオフィスのインテリアも選びたいな」彼: 「うん、どんな感じの家具がいいの?」彼女: 「木の手触り感とか、木目の色合いとか、自然のテイストが好き」彼: 「僕もナチュラルな家具が好きだな」彼女: 「大学院の研究室にそういう意識調査するAIとかないの」彼: 「あるよ。ちょっと待って」彼女: 「あるんだー。お、タブレット登場?」彼: 「えっと・・・コロナ禍で在宅時間が増えて、 6割以上の人がインテリアにこだわるようになったんだって」彼女: 「ああ、確かにそうかも」彼: 「で、好きなインテリアのテイストは、『ナチュラル』が1位。 さすが。トレンドリーダーじゃん」彼女: 「ふーん、2位はなに?」彼: 「2位はね、『北欧風』。あとは『モダン』、『和モダン』」彼女: 「みんないいわね...
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