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サマリー
あらすじ・解説
先ず会議において持ち寄ったネタを吟味しながら「中野サンプラザ閉館のニュースを入り口に、中野ブロードウェイへ向かうのはいかがか」と提案すれば、松重ディレクターは路傍でふやけた湿布みたいな顔をしたまま、何ひとつピンときてくれないので、「いや、まんだらけのお客さんに話を聞くわけでなく、地下にある商店街にいる方々に話を聞きに行きたいのだ」と説明を継げば、少しばかり眉が動き、さらに「要はサブカルチャーの聖地の側面でなく、そこで生活する人々の話を伺うということで」と続ければ、漸く松重も首肯したわけであり、翌日には中野ブロードウェイの地下商店街に集合し、どの商店の方であればお話を伺えそうか、なんとなくの雰囲気を探りながら「どうにも鮮魚店の皆様はお忙しいそうだ」やら「どう考えても店長だと思った人が店長でなかった」「オクラが安かったので、無意味に買った」など収録を敢行する前に、ロケイメージと前口上などの最終調整を行い、いざ収録をスタートさせてみれば、やはりなかなかどうして営業中のみなさまのお話をじっくり腰据えて伺うことは能わず、取材を断られるたび、松重はべこりと音を立てて凹み、それを鼓舞しながら、ロケを進めんとすれば夕刻を前にして確認したところ、どうにもデータが破損しておりました。 ここから先、共有されている音源は筆者もリスナーの皆さんもほぼ同じです。 松重の折れた心は一服や二服では元に戻ることなく青木繁『海の幸』のような足取りで中野ブロードウェイを後にし、泥濘に似た沈黙のなか、松重が捨て鉢気味に「帰宅の道中のタクシーの運転手さんに、賭けます」とだけ言い残して去っていった次第です。まさかこの『松重帰宅』がそのまま『東京閾値』に成り得るだなんて、誰が予想できたでしょう。松重も驚いたに違いありません。 以上のようなことを考えながら、先ほど買ったオクラを入れたカレーを拵えれば「ああ、オクラ入り、と、お蔵入り、がかかっているな」など思いつき、放送後記に書くか書かないか迷って、書いた。 文責:洛田二十日(スタッフ) Learn more about your ad choices. Visit megaphone.fm/adchoices