エピソード

  • 蘭郁二郎 「足の裏」
    2025/07/11

     特殊な性向を持った青年の奇妙な活動を描いた戦前の掌編です。作者は10代で江戸川乱歩に認められ、昭和モダンの時代らしい怪奇幻想の味わいがある探偵小説を発表していた蘭郁二郎です。谷崎とはひと味違うフェティシズムが、若々しい筆致で展開します。

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    21 分
  • 伊藤佐千夫 「告げ人」
    2025/07/06

     楽しい村祭りの前夜に、いわくつきの近親者の訃報がもたらされるところから話は始まります。家族が家父長制で結びついていた時代に、土地の慣習にしたがって暮す旧家が舞台となっています。現代とは違った家族のカタチが浮き彫りになる作品です。

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    31 分
  • 正岡子規 「熊手と提灯」
    2025/07/02

     凛と冷え込んだ初冬の夜道で、賑やかに往来する人々の群れとあでやかな灯りが現れます。寂寞の夜に祭りがもたらした対照的な景色を正岡子規ならではの筆致で描写しています。すでに病に侵されていた子規にとって、この体験は強く印象に残ったようです。

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    15 分
  • 山川方夫 「ジャンの新盆」
    2025/06/27

     フランス人の青年ジャンは東洋思想にかぶれ、魂の開放を求めてキリスト教では許されない自殺をはかります。願った通りに東洋の天界に行きましたが、お盆になると下界に戻るように申し渡されます。故郷と縁を切ったジャンは憧れの東京に降りることにしました。異文化を題材にしたユーモア小説です。

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    24 分
  • 小山清 「栞」
    2025/06/21

     関東大震災で被災し避難生活を送ることになった少年は、同い年の少女がいる親戚の家族と同居することになります。少しだけ今までとは違った暮らしの中で、少年と少女は仲良くなりほのかで淡い感情が揺れ動きます。繊細な心の動きをとらえた小山清らしいスケッチです。

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    15 分
  • 芥川龍之介 「仙人(鼠使い編)
    2025/06/15

     芥川龍之介は「仙人」のタイトルで二つの短編を残しています。これは先に書かれたものです。鼠の芝居を見せながら町から町へと渡り歩く男は、みすぼらしい老人と出会います。自分よりも苦しい人生を送っているように見える老人を知り、男にはある感情が芽生えていきます。

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    22 分
  • 田山花袋 「アカシヤの花」
    2025/06/10

     日露戦争の頃、中国の支社で働く二人の男が、本社の知人が社内不倫で左遷され、相手の女性は子供を産んだのちは不明という噂話に花を咲かせます。そんな二人が商用で中国を巡る旅をしているときに、ひょんな場所で噂の女性と出会います。田山花袋が本名の田山 録弥で発表した作品ですが、花袋名での登録としました。

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    18 分
  • 牧野信一 「辞書と新聞紙」
    2025/06/06

     王様は国の少年達の中から世継ぎの王子を選ぶとお布令を出します。全員が候補者で、王様の試験に合格した者が選ばれます。国中の少年達が書物にむかい勉強に励む一方で、貧しくて学ぶ書物を買えない羊飼いの一郎君にはなすすべがありません。それでも試験を受けなければなりません。どんな試験が行われたのでしょうか?

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    11 分