家禄を継げない武家の次男坊・林只次郎は、鶯が美声を放つよう飼育するのが得意で、それを生業とし家計を大きく支えている。

財布や煙草入れなど、身につける小物に刺繡と金銀の箔をあわせて模様を入れる、縫箔師の咲。両親を亡くし、弟妹の親代わりとなって一生懸命に腕を磨いてきた。

辻斬りで母を亡くし、上絵師の父も失意のうちに死んだ。律は、幼い弟のためにも、父の跡を継ぎ、布に家紋や絵を描く上絵師としての独り立ちを目指していた。

目黒不動で居酒屋を営むお夏。化粧っ気はなく毒舌で、くそ婆ァと煙たがられているが、懐かしい味のする料理は評判だ。ある日、客の一人だった遊女が殺され、お夏は静かな怒りに駆られる。

将軍の鷹狩りの下準備をするお鳥見役には、幕府の密偵と言う裏の役割があった。江戸郊外、雑司ヶ谷の組屋敷で暮らす矢島家は、当主が任務のため旅たち、留守宅を女房珠世が切り盛りしている。

岡場所で賑わう根津権現門前町にある裏店、通称「ごんげん長屋」に住まうお勝は、女手一つで三人の子を育て、女だてらに質屋の番頭を勤める大年増。

老中も一目おく江戸一番の札差・三国屋の末孫の卯之吉が、同心株を買って、定町廻同心になった。腕っ節は全くないが、放蕩三昧を繰り返していたときに得た知識と金力で難事件を、次から次へと解決していく。

焼き魚、チキン南蛮、トンカツ、コロッケ、おでん、オムライス、ポテトサラダ、中華風冷や奴……。

なんて、きれいでおいしいんだろう。江戸の菓子に魅せられた小萩は、遠戚の日本橋の菓子屋で働き始める。二十一屋――通称「牡丹堂」は家族と職人二人で営む小さな見世だが、菓子の味は折り紙付きだ。

お江戸は本所亀沢町にある貧乏長屋。万造、松吉の「万松」コンビを筆頭に、左官の八五郎・お里夫婦や後家女のお染、浪人の島田鉄斎ら個性的な面々が住んでいる。